どう思いますか?
野菜や果物の中には、一年中、口に入るため、いつが旬なのか分からなくなったものが少なくない。
しかし、こればかりは「旬」を逃すと、来年までお預けになってしまう。
ホタル見物である。
県内の名所の一つ、宍粟へ出かけた。
あたりが薄暗くなったころ、川の草むらで、一つ二つと点滅が始まった。
感激していると「山の方に、もっといい場所がありますよ」と声をかけられた。
地元保存会の女性だった。
後をついて暗い山道を沼谷川沿いに上る。
いた。
すごい数だ。
無数の光が点滅して、闇が呼吸しているように見える。
光の点滅が川面に映って何とも神秘的な光景だ。
「二、三日前から急に数が減ってしまって」。
決して少なくないのに、保存会の女性は何度も済まなさそうに言った。
ホタルの光が電灯に邪魔されないよう、街灯には黒い布がかぶせてあった。
近くの住民も家の明かりが外に漏れないように注意しているという。
谷崎潤一郎著「陰翳(いんえい)礼(らい)讃(さん)」に、こうある。
「近頃のわれわれは電燈に麻(ま)痺(ひ)して、照明の過剰から起る不便と云(い)うことに対しては案外無感覚になっているらしい」。
ホタルの闇を守ろうとする住民の取り組みに、頭の下がる思いがした。
「蛍見の人みなやさし吾もやさし」飯島晴子。
そんな気持ちになったのは、何も美しいホタルのせいばかりではないようだ。
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